2010/08/01

臓器医療の光と影



 「ベンケーシー」は1961年から1966年に放映されたアメリカのテレビドラマで、青年脳外科医の物語です。主人公のビンセント エドワードが半袖ハイネックのそのころ日本では見なかった外科医の白衣を着て活躍していました。
 1967年に南アフリカのクリスチャンバーナードが世界最初の心臓移植を成功させ,翌年1968年に札幌医大の和田教授のもとで18才の重症弁膜症の青年患者に、20才の脳死の患者の心臓が移植され、3日間生存できたのが日本の心臓移植の1例目でした。日本の外科医では今では当たり前のケーシー型白衣を最初に取り入れたのもこの和田教授でした。

 移植による治療は、死亡した人、いわゆる脳死状態でも個々の臓器は生きているので、その臓器を他の人の機能の無くなった心臓や、腎臓、肺あるいは膵臓や腸の代わりに移植するものです。 心臓移植に関しても技術的にはすでに1960年代には完成していたものの、その適応に関して議論となりました。本当に心臓の移植が必要だったのか、ドナーの脳死は確実だったのかという点につい多くの反対意見があり、移植医療にとって後々まで尾を引く問題になりました。
 今でも脳死の判定と、本人の了解を廻って完全には意見の一致をみていません。特に小児の臓器提供に関して今年法案がようやく成立したところです。そのため、多くのこどもたちは臓器移植を海外でうけ、日本においては、現在までに行われた死体からの移植は心臓、肝臓など成人の合計86例にすぎません。
 また、国外からアメリカやドイツで先進医療としての移植の治療を受ける人は数多く、ドナー待ちの状態が続き、一方、腎臓移植は、中国やフィリピンで国外患者に多数行われ,一部の移植は提供者に問題があるのではないかと言われています。
 現在日本では一年間に腎移植1200例、肝臓移植が500例でほとんどが生体移殖といって、健康な人の体の一部を切り取り移殖する方法で行われています。生体移植は健康な人の片方の腎臓、一部の肝臓、一部の肺などを切除して他の患者に移植する手術で、この移植もまた問題をはらんでいます。
 
 本来なら,死体よりの移植が最適であっても移植の必要な人に比べ提供する数が圧倒的に少ないため、腎臓、肝臓、肺など健康な生きた人の臓器の一部を切除し移植臓器として提供することに関する問題があるためです。
 
 いずれにしても臓器移植が救命治療として確立し、現在までに世界中で数十万人の生命を救い、生活の質を改善してきています。しかし、ドナーにまつわる影の部分が数多く報告され、2008年5月2日イスタンブール宣言で、臓器取引、移植商業主義、移植ツーリズムを防止する提言がなされました。