2025/09/28

高齢化する世界と人型ロボット その2


人型ロボット


 関西万博で、「いのちの未来はロボット工学者の石黒 浩 大阪大学教授のプロデュースしたのアンドロイドの館で、その中で50年後、2075年の家族のストーリーが展開される。まず最初のコーナーで日本のヒト型造形物の歴史が展示される。縄文時代に作られた土偶、弥生時代の埴輪、鎌倉時代の仏像、やがて江戸時代になると人形浄瑠璃の人形やからくり人形、時代時代に人型の造形物が作られた。その後の世界ではAndroidと共生する社会、肉体に寿命が尽きても生き続ける未来が想像される。

 現代において日本が人型ロボットで先頭を走っていた。2000年頃にはソニーの犬型ロボットのアイボ、ホンダの人型ロボット アシモ、トヨタも2005年愛知万博で多くの人型ロボットを展示した。そしてその後にソフトバンクからペッパーが発売され、全国の店や介護施設で使われた。しかしその時代、AIの機能は限られたもので、すぐに飽きられてしまった。その後目標を失ったためか、それらは改良されることなく、今はアメリカ、中国あるいは韓国が技術競争の先頭を走っている。


 ここ数年のAIの進歩は急速で、様々なAIを備えた人型ロボットが開発されている。今年、テスラのCEOイーロンマスクは「テスラの価値の80%をロボットが生むようになる。」とSNSで表明した。テスラは 現在身体性AI(フィジカルAI)で人工知能を持ったロボット型の『オプティマス」を開発中で、このロボットが現実世界の人間や機械の動きをセンサーでとらえデーター化して、学習する。そして「10年後には10億のロボットと共生する時代がやってくる。」と予想して人型ロボットの生産を推し進めている。

 エヌビディアは、高度な人工知能を搭載したロボットの実現に向けて、ソフトウエア開発から半導体を提供する構想を10年前から進めていた。現在アマゾンは倉庫に、アジリティー ロボスティックの「ディジット」を取り入れ、メルセデスベンツはアプトロニックの「アポロ」を取り入れている。これらのロボットはいずれもエヌビディアのシミュレーション技術を使って高度な動作を行えるようになった。


 一方、イスラエルはガザでの戦闘で、陸上兵器の爆弾ロボットを使った。AIによる自律走行が可能で、大量の爆弾を搭載し、無人の軍事車両で、正確に標的を攻撃し、爆発させることができる。そしてハマスの拠点と見られる建物に、この爆弾ロボットを突入させている。


 AI技術はバイオテクノロジー、ロボット工学、薬の開発などの分野で急速に進歩し、医療、介護、車などの分野で有力企業になる可能性もある。一方イスラエルのように軍事的技術の進歩にもつながる。日本の企業は、この世界競争においてどの分野で優位に立つかが問われている。



高齢化日本と高齢者施設


 半導体の進化について、1965年50年前ムーアが18ヶ月で2倍半導体の性能が上がると唱え、その通りに進歩した。今でもムーアの法則として有名で、現在のAIの進化はさらに急速で、オープンAIのチャット GPTの実用化でその進歩は弾みがつき、数年後には10億倍のニューロンに相当する人工知能(  AI)になると予想されている。それを利用した介護用ロボットの開発が進めば、自らがロボットを使って自立した生活ができることが実現する可能性は高い。


 現在介護保険で使われている特定疾病は、認知症や脳梗塞や脳出血による病気など、体の司令塔である脳の障害、そして整形外科的な脚や腰、膝などの動く機能の障害、そしてがんの進行などに分けられている。そのうちの認知症などの介護は、AIの会話ロボットによる介護が有望である。認知症の認知機能は0か100かではなく、記憶が少しずつ衰え、判断力が衰え、場所がわからなくなり、そのため道に迷うようになり、財布を置き忘れ、お金が管理できない、食事が作れないなどの症状が出てくる。それでも過去の楽しい記憶や、いつもしている作業はかなり自分でできる。そんな状態の人に対応した、会話型ロボットは非常に役に立つ。認知機能低下の程度に応じて、それの適した会話の内容に対応して、会話のパートナーとなりうる。

 

 身体の活動に関わる、足腰や膝の痛みによる活動の制限は、それを支える補助ロボットが必要になる、人が支える代わりに支えることができる安全なロボットは進化するほど安全性と機能性が高まる。


 さらに施設における、炊事や洗濯掃除の作業はすでに実用化しているものがあってさらに進化する。そして案内役とか絵を描いたり、歌を歌ったり、体操したしする指導用のロボットはペッパーで一部は試みられ、これが進化すればさらに重要性を増す。日本は世界でトップの高齢化社会で、高齢者施設にロボットを導入し、楽しい施設にしていくことは高齢化日本の役割である。コストにあった、機能に優れた、人型ロボットが活躍すれば、今後の10年高齢化する世界を乗り切ることができる。

 今後、テスラと同じようにトヨタが人型ロボットのリーディング メーカーになるかも知れません。今月、政府も内閣府で人型汎用ロボットを30年までにつくる方針を発表しました。

2025/09/15

1920年代 捕食された民主主義

  1920年代個人主義的自由主義が世界の現実に対応できなくなって、民主主義が衰退し、ポピュリズム、大衆迎合主義が台頭した。1920年代は世界中で都市化、大衆化が進み、ソ連の共産主義やイタリアの国家社会主義が政権を担った。 結局、民主主義の破綻は偶然ではなく、自由主義が時代の要求に応えられなくなった必然的結果である。


                               歴史とは何か                  E.H.カー


 自由主義と民主主義が戦後の秩序を作り上げた。第一次対戦後、連合国側は民主主義と民族独立の戦いと宣伝し、その戦争でロシア帝国とドイツ帝国、オーストリアハンガリー帝国、オスマン帝国は本当に滅びてしまった。オーストリハンガリー帝国は崩壊しオーストリア共和国、ハンガリー共和国、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ポーランドに分かれ、ハンガリーは自国領土の3分の2と人口の5分の2を失った。ドイツやトルコは共和国となり、ロシアはソ連になった。


 戦勝国のフランスでは、セーヌ河左岸のモンパルナスに芸術家たちが集まり、芸術家村を作り、カッフェ、キャバレー、劇場やジャズクラブが夜も昼も賑わいピカソやエコールド パリのモジリアーニ、藤田嗣治、シャガールなどが活躍した。

1918年第一次大戦の年に、レオナール フジタは油画による墨絵 でパリの風景画や少女の油絵を出品した。1920年にサロンに多くの伝説を残した画家モジリア二が35歳の若さで死亡。その後フジタは夜のモンパルナスの寵児になり、日本画のような乳白色の裸婦像でサロンで高い評価を得た。

そしてアメリカの小説家、ヘミングウエーやフィッツジェラルドも住んでいた。1926年ポアンカレが政権を担い、文化芸術の黄金時代を迎え、狂騒の20年代と言われた。


 第一次世界大戦の後の世界に対してアメリカ大統領ウィルソンは新しい解放された国際体制を求めて国際連合を創設、民族自決の世界秩序を打ち出した。その国際連盟にアメリカは参加しなかったもののアメリカが世界の中心になった。経済は発展し、大衆文化は花咲き、ラジオ放送が始まり、映画は人気を呼び、音楽はジャズが大流行し、ジャズエイジと呼ばれフラッパーが登場し。株価は毎日のように上昇を続け、人々は皆豊かになった。

 

 イギリスでは1916年から1922年ロイドジョージや1929年から35年ラムゼイ マクドナルドが融和的な政策を進めていた。チャーチルは当時時代遅れの戦争屋と呼ばれ、政権からは遠ざかっていた。


 そして、ロシア革命でロシア帝国は滅び、ケレンスキー内閣ができた。それを武力で転覆して、1917年トロッキーのボルシェビキ共産党独裁政権が誕生した。

 ドイツ帝国は共和国となりグスタフ シュトレーゼマンが左右の勢力を抑え共産主義を抑え、ヒットラーのミュンヘン一揆を鎮圧し、ワイマール共和国を守った。100日内閣で政権を降りたのちも外務大臣として活躍した。 

  イタリアでは第一次大戦は勝利なき勝利と呼ばれ、立憲君主制のもと政権交代が頻発し、政党政治への信頼は弱かった。かつてムッソリーニは社会党員であったものが、1919年ファシスト運動を開始し、強い国家、反社会主義を唱え、国民の支持を集め始める。やがてファシスト党がローマに進軍して、ムッソリーニが権力を掌握した

 その後、ドイツでもワイマール共和国は危機に陥る。中道の穏健な政党は過激な政党に取って代わられることによって政治の中道は崩壊していった。ナチスは少数の不寛容な人びとだけでなく、大多数の寛容な人々にも支えられる。寛容な人々もヒットラーの煽動する偏見を表面では抑制しつつ、心中では共感を示した。1933年ヒットラーのナチス政権が生まれ国家社会主義の時代になる。


 日本でも、1920年初頭は普通選挙のもとに護憲3派が政権を担い大正デモクラシーの時代を迎えた。その後、政党政治は財閥と結びついた金権政治と権益を求めた党派の間の足の引っ張り合いなどに明け暮れ、国民の信頼を失っていった。さらに関東大震災が起き、昭和恐慌の経済混乱による、国民生活の貧窮に政党は対応できなくなり、軍や国家主義の思想が国を救うという方向に国民も向かっていった。1930年桜会が結成された。「ただいたずらに政権、物資の私欲にのみ没頭し、上は聖明を蔽い、下は国民をあざむき、滔々たる政局の腐敗は今やその頂点に達せり。」と趣意書で政党政治を批判し、軍が日本の改革に乗り出した。


 政党は変化した時代の国民の期待に答えることができず、扇動により国を動かそうとした人々に捕食されてしまった。


2025/09/01

地球温暖化の夏 気候と生態系

 今年も終わらない夏が続いている。日本列島の各地で40℃を超える。安定化した気候が崩れると生態系は変化し、地球上で生命の大絶滅が過去5回起きている。

 地球と月にはほぼ同じ太陽のエネルギーがそそいでいる。月には大気がなく、水もなく、生命が生まれなかった。一方、今から20億年前には地球上の多くの生物が光合成で酸素を作り出していた。しかし海にあった鉄と結びついて、錆びて海底に沈んでしまい、嫌気性生物が生き延びていた。その後、酸素が作られ、好気的単細胞生物が現れた。そして酸素がしだいに多くなり、6億年前に海に動物が誕生した。


 現在と同じ地球上の酸素濃度になったカンブリア紀に、大型の活動的動物が生まれ、微生物も生まれた。4億5000万年前には植物は陸地に進出し、それに動物も続いた。5億4000万年前にカンブリア紀に動物の体が大きくなり、動物進化のビックバンが起き、海中の生命は現在に近い様相になった。5億年から4億5000年前、植物と微生物がが陸上に初めて進出し、それに動物も続いた。4億年前のミミズのはった後の化石が見つかり、さらにその1億年後にダンゴムシが現れ、その後クモ、ダニ、ムカデ、昆虫が続き、両生類の後に大型の脊椎動物が地上に登場し恐竜時代をつくる。 隕石の地球との衝突がきっかけで、爬虫類とシダ植物の時代は終わり、哺乳類の時代が始まる。 地球上の長い歴史をたどると、古生代の古い両生類は、1000種が滅び、生き残った一種が原始的爬虫類を産み、その爬虫類も1000種が滅び、生き残った一種が中世代の恐竜の祖先になる。


 この生態系を支えている生命の元は植物で、植物は太陽光を吸収して糖を作り出す光合成を行う。すべての生物は光合成に依存している。そして生き物を構成している窒素、リン、カルシウム、マグネシウム、カリウムは地球外からは、手に入らないので死んだ生物からこの物質を再利用している。この間地球に降り注ぐ太陽光エネルギーは、地軸の変化で大きく変動する夏に北半球に届く熱量が2%減るだけで、地球は氷河期に突入する。


 生態系は、温度と降水量で異なる。北極海と南極の付近は、小雨、低温、永久凍土のツンドラに覆われ、それから少し離れるとタイガと呼ばれる広大な針葉樹林帯が広がる。温帯は、豊富な植物、豊かな土壌、大量の落ち葉と分解者の住む温帯林。雨が少なく土のやせた草原、そして降水量の少ない砂漠地帯になる。 赤道付近は降水量と湿度の高い、熱帯雨林、雨量の少ないサバンナ、砂漠となる。

 海で生物が生まれる前、地球上に土はなかった。陸上は全て侵食された岩による不毛の地であった。その岩が風化し、砕かれ、植物や動物の遺体とそこに住むバクテリア、菌糸、小型の生物によってつくられ、そこに植物が根を張り、落ち葉が積もって分解され、豊かな土壌を作り出す。死んだ生物はバクテリアや菌類よって単純な無機化合物に分解される。そして、土に一時的に蓄えられる。枯れ葉は地面に落ちるとバクテリアや菌類に分解され土の一部になる。その土に生える植物は樹の根に住む菌類によって吸収され、葉を作る材料になる。


 地球上の植生は主に気温と湿度に影響される。地球上の気候は最近の4万年

間のグリーンランドの表層の研究から、激しい変化を繰り返していたことがわかっている。7000年くらい前からそれが非常に安定し、人の文明の発展の時期と一致する。さらに起源900年から1990年のイギリスの年平均1000年から1300年にかけて気温は高く中世温暖期と呼ばれている。1500年から1800年にかけては、小氷河期と呼ばれる寒冷期になり、作物は取れず飢饉になった。日本でも同じような傾向が見られ、平安時代の温暖期があり、寒冷期の江戸時代にはコメなどの農作物の収穫量に大きな影響を与え飢饉になった。


 産業革命以来世界の二酸化炭素の排出量は、年々増加し、世界中の多くの地域で暑い日が増え、寒い日は減る。今後100年間で起こる世界の気候変動のスピードは、この5000年間で人類が経験してきた変化の10倍以上になり、どこまで進行するかわからない。


 今確実に進んでいることは、地球温暖化によってグリーンランドや南極の巨大氷床が崩壊し、夏になると北極海の氷が以前より大幅に解け、船舶の航行が可能となりホッキョクグマの生態にも変化をもたらしている。そしてメキシコ湾流や太平洋の黒潮の流れなど海洋循環の巨大な変化が起きている。その結果、世界中で旱魃や熱波、洪水やハリケーンの強大化起きている。


 温帯の日本では、四季があり季節はめぐる。この気候は、海と陸の気流や海流に支えられている。これが温暖化によって変化すると、四季はなくなり、台風は強大化し、豪雨による河川の氾濫は頻発する。そして米やくだもの、野菜の生育に影響を与え、乳牛や豚の生育、海産物に悪影響が及ぶ。


 温暖化による人への直接的健康被害は、熱中症の増加、下痢性疾患の増加、マラリアなどの感染症の増加がある。長期的には野生生物や種の消滅につながる。地球温暖化の生物多様性の影響は、気温が上がると生物の気候適応の範囲が減って、種は絶滅する。3度の気温上昇で20%から35%の種は消え去る。これは現在すでに海の中とりわけ珊瑚礁の生態系に大きな影響を及ぼしている。同じように3℃以上の温度上昇によって陸上では熱帯雨林の枯死が起こる。樹木が枯れると、蟻が減ってありどりは消え、日陰を好む蝶も消え、猿やジャガー、ピューマその糞や肉で生きている糞中類も消え、鳥類や哺乳類の病原生物にも影響は及ぶ。



 気候の変動は地球生命圏にどんな影響を与えるのかは完全にわかっていない。しかし、気候、生態系は連鎖し、ある臨界点を超えるとカタストロフィックな変化を起こすことだけはわかっている。