2017/10/29

孫悟空かフランケンシュタインか


 遺伝子の編集


 体外受精は母体の卵巣から卵子を採取してそれに体の外にある精子を使って試験管、シャーレの中で受精し再度子宮内に戻し、そして子供をつくる方法です。これはケンブリッジ大学のロバートエドワーズ教授と婦人科のパトリックステップトー医師が12年にわたる研究の末完成させたもので、1978年イギリスのルイーズ ブラウンさんが世界で始めて体外受精によって誕生した。当時は「試験管ベイビー」とよばれてマスコミに報道され有名になった。

 日本では1983年にこの体外受精に初めて成功し子供が生まれた。その後しだいにその数は増え、現在では一年で体外受精で約2万人が日本で生まれ、今日までに世界中で700万人の体外受精による子供が誕生している。最初のころ、宗教的には自然に逆らうとして反対の意見もあったものの、現在では世界中で確立された出生の方法となって認められている。

 1996年クローン羊ドリーがイギリスで生まれた。哺乳類では不可能と思われていた羊の子供が遺伝子操作の結果、成熟した乳腺の細胞の核を使ってできた。まるで孫悟空と同じで、この技術を使えば拒絶反応のない臓器提供のためのクローン人間の作成も可能となった。2001年日本でクローン人間造りは関連の技術を含め法律で禁止された。

 体外受精から40年後の現在、医療技術は長足の進歩を遂げた。病気の治療に使う遺伝子組み換えは急速に進んでいる。動物の胚細胞にクリスパーという技術をつかって簡単にDNAの配列を切って,再編集すると遺伝子組み換えの生物ができる。まさに高校生でもフランケンシュタインを生み出せる技術が開発された。
 そして白血病の治療は病態によっては遺伝子治療が可能になり、肺の細胞を変え、のう胞性線維症や鎌状赤血球症、筋ジストロフィー治療の試みが成功している。1つの遺伝子が原因でおこる遺伝病はかなり治療可能となってきた。


 さらに世界中で自閉症の猿やパーキンソン病の豚がつくられそれを用いた医学の研究が始まっている。実験室でヒヒに移植した豚の心臓がすでに2年以上生きている。それとおなじように遺伝子の組み換えによる人への移植可能な臓器を持つ豚の作成がほぼ技術的にはできるようになった。
 さらにジュラシックパークのように恐竜を誕生させる技術、 地球上で絶滅したマンモスを象の遺伝子を使ってよみがえさせる実験が行われている。
 そして2015年中国では警察犬や軍事犬として使える筋肉隆々とした犬が造り出された。そしてやはり中国では人の生殖細胞のゲノムを変える(デザイナー ベイビーを生みだす)実験が既に行われている。フランケンシュタインではない理想の人をくみ変え技術でつくり出せる時代になった。

 この技術の進歩は希望なのか悪夢なのか、今後遺伝子の変更の技術に対して目が離せなくなっている。人工授精が以前、少子化に対する対策として勧められたこともあった。しかし少子化は経済と社会の問題であり人工授精は家族の問題であった。さらに進んだ現在の遺伝子の操作、編集はたんなる技術の問題ではなく今後のおおきな社会的問題となってきた。