2024/08/18

ニュータウンとタワーマンション

  ニュータウンの時代

 戦後の急速な都市化と高度経済成長の時代には、東京や大阪などの大都市圏でニュータウンが開発された。当時は、広い土地と新しい生活環境が提供される新しいニュータウンの戸建て住宅が、家族向けに非常に人気が高く、郊外でのマイホームはテレビでも憧れの街として登場していた。

 開発は自治体による大規模な住宅供給の一環として、製造業が日本の産業の中心になる時代に、職場と住居が近接、あるいは職場までの通勤が可能な、緑豊かな住まいとして開発された。1960年代から80年代にかけて、都市郊外を中心に、ニュータウンの建設が盛んになった。特に1970年からの約5年間は、全国で100カ所以上のニュータウンが開発された。その後も、1973年がピークで1990年のバブルの崩壊まで日本全国で造成され、

2000年以降、急速にニュータウンの建設は減少した。現在、国道交通省の全国ニュータウンリストによると、住んでいる人口は1千100万人、そのうち入居開始後40年以上のニュータウンだけで700万人が住んでいる。

  1989年ベルリンの壁が崩壊し、世界のグローバル化が進み、安価で豊かな労働人口が世界経済に参入し、企業は豊かな労働人口を求めて中国や東ヨーロッパに工場を建て始めた。日本企業もまた、中国やアジアの国々に資本を投入した。その結果、多くの製造業は海外に拠点を移し、海外で、安価な労働力を手に入れた。日本国内にある製造業の工場は縮小し、閉鎖されるようになってきた。

 そして日本は、バブルの崩壊の後に、30年デフレと言われる先進国病に陥った。第一に出生率の低下による少子化と高齢化。第二に、そのため社会保障費が膨らみ、その費用が恒常的に肥大化した。そして第三には国家の経済が成熟し国内産業の海外移転などで産業構造の空洞化のため低成長になった。

 産業構造の変化によって、かつてのニュータウンが依存していた工場や大規模企業の縮小や撤退で、通勤先が遠くなり、都心部への交通のアクセスが悪いと、働く人にとって魅力が薄れていった。さらに、家族の形態が変化し、2世代や3世代の同居はほとんどなくなった。それに拍車をかけたのが少子高齢化で、かつての平均寿命はますます伸び、平均寿命は80歳を超え、100歳以上の人口も現在約8万人になった。一方、少子化は歯止めがかからず、学校の生徒数は毎年減少して、小学校や中学校は統廃合に追い込まれる地域も出てきた。


 さらに国全体が少子高齢化になる中で、東京一極集中化が急速に進行してきた。かつての地方の中心的都市である大阪、名古屋、福岡、仙台、札幌からも若者が東京に流入している。それでも大阪や名古屋、福岡は、周辺の都市からは、現役の世代は流入し、都心部の再開発で、都市の行政や、産業を担う中枢機能は保たれている。一方、周辺の都市は、新陳代謝が起こらなくなったために、次第に経済的な吸引力が低下している。それと同時に周辺のニュータウンは、活力をうしなってきた。


 この現象は日本では、江戸時代の天保時代に遡る。天保の時代1830年頃、農村の飢饉がきっかけで、都市へ多くの住民が移り、特に江戸は、人口が増えすぎ、無宿者の犯罪も増えてきた。それに対して江戸幕府は水野忠邦が天保の改革の「人返し令」で、農民を地方に返し、荒廃した田畑を復興させようとした。しかし都市と農村の人々の不満は収まらず、地方再生の改革事業は失敗に終わった。


 タワーマンションの時代


 タワーマンションとは高さが20階以上で60メートル以上あり、共有の施設、緑地や空間を広く設ける建物を総称している。1980年代にかけて東京中心に立て始められたものの、高層住宅に対する抵抗感があり、当時は集合住宅が主流であった。バブル経済の崩壊後、2000年代に大都市圏での土地利用の効率化、都市開発プロジェクトの一環としてタワーマンションは本格的的に建て始められた。交通のアクセスが良く、コンビニを併設したりして生活の利便性がよく、マンション内にプールやジムが併設され、タワーマンションの人気が高まる。世界のグローバル化で産業構造が変化して、製造業が中心であったものが、日本でも情報産業やサービス業が拡大し、都市部で働く人にとって、職場に近い生活のできるタワーマンションは魅力的になってきた。

 さらに2013年の、デフレからの脱却のため、金利を低くして、お金を市場に行き渡らせて、景気を回復させるための緩和マネーが投資の目的もあって購買に向かわせたこと。世界的インフレによる材料費の値上がりとともに、10年前の2015年頃の東京の湾岸地区である晴海や豊洲では、タワーマンションの値段は高沸した。一方、中国では不動産価格の低迷や、中国国内での不動産が最長70年の使用権のみで、私有財産にはならないことや、国内資産の保有の不安から、日本やアジア各国の不動産を買う人々が増えている。日本の不動産であるタワーマンションもアクセスの良さや、安全性や、中国の富裕層にとっては魅力的な物件になっている。円安になるとともに、海外の豊かな人々も、東京の湾岸地区を中心としたタワーマンション購入に向かい、ブランド価値は高まり、社会的ステータスとしてますます人気になった。


 世界的にも、ニューヨーク市では、マンハッタンを中心に高級タワーマンションの建築が続き、海外の富裕層や、投資家はその豪華な内装や高級施設を求めて購入している。トロントでも急速な人口増加に対応した、高級住宅の建設が進み、アジアでは中国の北京、上海、深圳で高層住宅が林立している。パリなどの規制のある都市以外では、世界の都市競争とともに主要都市にはタワーマンションが次々と建設されている。


 アメリカでも、ピッツバーグのあるペンシルバニア州、デトロイトのあるミシガン州、オハイオ州やインディアナ州など産業構造の変化によって自動車産業や鉄鋼業が盛んな地域の工場は閉鎖され、グローバル化によって製造業は労働コストの低い国々に移転し、人口は減少しラストベルト地帯が生まれた。それを救済する公約を掲げてトランプ大統領が2017年当選した。

 一方、 トランプ大統領とその家族は、ニューヨーク市のマンハッタンに58階建てのトランプタワーを所有し、シカゴ、ラスベガス、ホノルルなどのアメリカ各地のトランプブランドのタワーマンションを持ち、トロント、バンクーバー、パナマ、フィリッピンにもトランプタワーを展開している。今後の展開最高級ブランドのトランンプタワーが、2025年ドバイにその後もサウジアラビアにも建てられる予定となている。


 今後、政治、経済、気候、災害などの急激な変動が起きない限り、この流れは当分続きそうに思われる。