「アンドロイドは電気じかけの羊の夢を見るのか」の物語は、主人公のリック デッカードが、気分を調整するムード オルガンを枕元に置いて、目覚める場面で始まる。リックは火星から逃亡し、人間の中に潜伏しているアンドロイドを破壊する仕事を請け負った賞金稼ぎで、この仕事でお金を貯め、昔のように本物の羊を飼う夢を持っていた。今は、死んだ羊の代わり電気じかけの羊を飼っている。
核戦争により、地球上には、生きた動物も、生き残った人間も少数となり、さらに地球上に生き残った人間も適格者の人間と、生殖を許されない特殊者に分けられ、人間そっくりに作られたアンドロイドが地球の外でも働いていた。アンドロイドは、しだいに精巧さを増し、ほとんど人間との区別がつかなくなっていた。そのアンドロイドが火星から逃げ出し地球上に紛れ込んできた。
このアンドロイドを破壊するためには、人間と識別することが必要になる。それは、人間の感情移入の能力、共感能力が試されるテストをして、感情と共感性の無いアンドロイドと人間を見分ける。アンドロイドは成長した過去を持たない、そのため過去の子供時代の記憶をつくり、それをセットする。アンドロイドはしだいに進化し、人間に近くなり、自分は人間だと思い込むアンドロイドもできる。
人間とアンドロイドを峻別するのは、生物が50億年の進化の過程でつくりあげた子孫をつくり、生存するシステムで、遺伝子のAGCTの連鎖からたんぱく質をつくり、体をつくり、子孫を残す、この過程で感情が生まれた。ここが機械との根本的になる。この物語は、アンドロイドの性能が進化し、人間と外見上は区別がつかなくなり、どこかで、人間的な感情を持つようになれば人間と区別できないことになってしまい、そして、人造のレプリカが子孫をつくれるようになる世界を描いている。
地球上で適応進化した動物が動物らしく見えるのにはいくつかの根本原理がある。すべての臓器は次第に成長し、協調して活動をする。 筋肉はしだいに強くなり、正確な運動で、手と足、さらには体全体を使って、相手を追いかけ、捕食し生きていく。地球上の荒れた地面でも走り回れなかったら、敵に捕食されてしまい生き残れない。
機械は、ほとんどの場合平坦な面を進み、荒れた地面でもキャタピラー型の車輪が有効で、足は必要ではなく、車輪が目的にかなっている。ロボットが他のロボットに捕食される事はなく、進化の過程で得られた4足の歩行を真似たロボットは複雑になりコストが高くなってしまう。
このように、ロボットと動物や人間は全くシステムが違い、目的が違って出来上がっている。 しかし、この全く異なるシステムが急速な機械の進歩で、動物や人間の動作そのもの、あるいは、話しかけたり、ほほ笑みかけたり、共感を示したり、歩き回ったりすることができるようになり、人間に近いアンドロイドとなり人間と共存する世界が近ずいてきました。
人の声の機械による再生はすでに、完成に近くなり、世界中で、有名な歌手、台湾ではテレサ テン、アメリカではプレスリーの再現が試みられ、今年、日本で、美空ひばりが新しい曲を、AIで歌い、その姿も3次元画像で作り出され、かつての多くのファンや近親者は、その曲に感激した場面が放送されました。
現在、AIによる声や歌は、もはや実在する人の声や歌との区別がつかないまでに進歩し、フェイクニュースを語らせる時代になっています。
一方、未だ幾らかの気味の悪さを残しているものの、人間の姿形や動作を酷似させる技術もますます精巧になり、様々なヒューマノイドロボットがつくられています。人間の体を3Dカメラでスキャンし、それにそっくりの体を作り、個人の顔の筋肉を模倣して、感情、喜怒哀楽を表現させる技術で、顔で感情表現をすることが可能になってきました。
現在、ロボットに感情を持たせたり非常に本物らしい表情をするロボットが香港で開発され、ソフィアとなずけられ、ファッション雑誌で紹介され、サウジアラビアで市民権が与えられる時代になりました。日本でも夏目漱石や実在する俳優のアンドロイドが作られました。技術の進歩はとどまることはありません。どこかでこの両者がかさなりあい生存への欲望、好奇心とか憧れを持つ心を持ったアンドロイドが開発され、ブレードランナーの世界は現実のものになるかも知れません。
アンドロイド登場すれば、人間とは一体何者かが問われることになる。すべての人間は他者とは異なり特別な存在であり自分なりに考え、感情を持ち他者への共感力を持った存在であり、かけがいの無い存在として生まれてきたものなのか。この人間と非人間の境界はどこにあるのか、そして人間的感情を持った存在との違いは何か。来るべき、近未来はどんな世界になるのか。
1996年、羊のドリーが遺伝子操作誕生により、技術的には人間でもこのクローン化の実現する未来が近いことが明らかになった。カズオ イシグロ はこれをもとに小説で、遺伝子操作によるもう一人の自分、クローンと共存する世界「私を離さないで」を描いた物語を2005年に出版した。
物語はキャッシーの子供時代の回想、イギリスの田園の施設を舞台にどこにでもある少年少女のノスタルジーで始まる。やがて、彼らは臓器提供者として、人工的に世に産み出されたクローン人間であることがわかる。この人工的に生まれた人たちの、感情や揺れ動く心と過酷な未来をキャッシーが語る。この世界では、結局激流があまりに強すぎて、それに逆らうことが出来ず、握り合った手を放し、別々に流されてしまう運命の「人びと」を静かに描いている。
現在クローン技術は、さらに進歩して、羊から始まり、ペット犬、そして、クローン猿までも生み出されている。