2024/11/17

高令化する世界と人型ロボット

  現在、世界中で労働人口減少、高齢化が進む。 第2次世界大戦が終わった戦後、平和の時代に生まれた子供たち成長し、1970年から2010年までは日本を含め先進国は団塊の世代、ベビーブーマが労働人口に加わり、女性が労働に参加し、さらにグローバル市場に中国が加わり、ベルリンの壁崩壊後は東欧の人材も加わって、世界の労働人口は2倍以上になった。それと同時に出生率は低下し、人々の平均寿命が急速に伸びた。その結果、経済の成長は先進国で減速した。高齢化の先頭の日本は、若者が有り余る近隣諸国に労働力を求め、企業は中国や東南アジアの国々に生産拠点を移していった。


 今起こっているのは、少子化による世界中の若い世代の労働人口の減少と、高令者の圧倒的な増加である。2015年から2030年にかけて60歳以上の世界人口は9億人から14億人に増え、超高令者である80歳以上の人口は2050年には4億人を超える。そして今まで経済成長を牽引してきた国ぐにの高令化率がますます高まっている。人口構成によって世界は3つのグループに分けられる。第一のグループは世界人口の27%に当たる際立って高令化するグループ。そこには日本、韓国、中国、ヨーロッパ各国が含まれる。将来高令化するもののそれほど極端でないグループが世界人口の23%、米国、カナダ、ベトナム、インドネシア、トルコなど。残りの50%の国々インド、パキスタン、フィリピン、南米やサハラ以南のアフリカ諸国などは未だ若年人口が圧倒的に多い。


 高令化のトップを走る日本は2020年の高令者の人口は3600万人で、2040年問題が語られる頃には、高令化人口はさらに100万増加する。一方、中国は2020年1億7000万人の高令者で、2040年には3億人を超える。それを一人っ子政策の結果一人の孫が4人の祖父母を支える時代になる。アメリカやイギリスでも後期高令者は増加するものの若者の人口も増加する。


 高令化する社会では、医療や介護のコストが劇的に増加する。現在65歳以上の高令者の54%が2つ以上の病気を抱えている。そして85歳以上になればそれがさらに増えて68.7%以上となる。現在ガンや心臓病が最も多い疾患であるものの、医療は進歩して次第に治癒可能となり、それに変わって、認知症やパーキンソン病などの病気が増えてきている。その結果今後、医療介護分野の労働力の必要な割合はさらに増加する。医療介護は製造業のように生産拠点を海外移転したり、生産性を向上させることはなかなか難しい。




 人口の減少を補う切り札として期待されているのが、人型ロボットなどのロボスチティック産業である。イーロンマスクは自動運転が出来る車は、タイヤを使ったロボットで、それが作れるなら、足をもつロボットも作れるはずとして、人型ロボットの開発を進めた。それがオプティマスで、身長は170センチで、傷つけられるのではないかと感じないような柔らかい姿の人型ロボットで、2021年8月に公開された。この開発はテスラ者の自動運転開発チームによって作られた。

 この人型ロボットはまだ見ぬ10億ドル市場と呼ばれている。10年後には5兆円規模の市場になり、1000万台以上の人型ロボットが活躍し、70%以上の職業に影響が出ると試算されている。  この人型ロボットは、今でも物流作業に使われ、自動車製造では、BMWがアメリカノースカロライナの製造拠点で、フィギュア社製のヒューマノイドロボットを使って自動車の製造作業が行われている。今後は、宇宙開発や、危険な環境での作業や調査活動に使われ、そして家庭にも人型ロボットが登場し家事や日常作業をするようになる。医療では手術支援や、リハビリ支援に現在も少しずつ使われ、進化しつつある。そしてAIを搭載した、人型ロボットが感情の読み取りや人のケアに対応するようになり、フィジカルAIによるロボットとAIの融合が今後の医療界を、大転換させる可能性がある。


 AIによる自律機能を持ったテスラの人型ロボットオプティマスは300万円以下で2年以内には発売される予定で、それらは製造工場、一般家庭、あるいは介護の現場で利用される。そして自動運転をするロボタクシーは車を所有する人が誰でも利用できるようになり、タクシーの運転手不足は解決する。さらに、スペースXなど宇宙開発用のロケットとその乗組員としてのロボットは月や火星の探索に欠かせないものとなる。

 

 高令化しつつある先進国は、その50%から60%は高令者の単身世帯となり、社会的にその人たちを支える必要がますます増加する。今後、世界中の高令単身世代の介護者として家庭ロボットは普及する。平均寿命が伸びるとともに増える認知症などの介護が今後世界中で課題になってくる、それを補うのは、介護を担う自律型のロボットである。若者人口の減少による、人手不足を補うのは、工場で働いたり、物を配送する人型ロボットである。高令化し人手が不足する近未来は人型ロボットの活躍が不可欠になる。そして、近未来はスタウオーズのC-3POのような人型ロボットと共生する社会になる。



2024/11/06

大転換 トランプの時代

  ユーラシア大陸の中央には家畜となる動物の群れの後を追いかけて、牧畜という生活様式が誕生した。それはユーラシア大陸中央の乾燥地帯の生態系に適した生活様式であった。その果ての砂漠に守られた地域に大きな河の周りに農耕文明が生まれた。チグリスユーフラテスの下流域、ナイル川の下流域、インダス川の中流域、黄河の上流域に4大文明は生まれた。

 エジプト文明は数千年続いた。エジプトの都市の存在は、まさにナイルの賜物であり、砂漠は外敵に対する自然の巨大な防御壁であった。近世になり、ユーラシア大陸の乾燥地帯の周辺に、ロシア、中国、インド、トルコ帝国が生まれ、1000年以上の長い期間、繁栄と衰退をくりかえしていた。帝国はそれぞれの領域で閉鎖的システムをつくり、他の帝国との接点はなかった。


 ユーラシア大陸の帝国のさらなる周辺の西欧の国で、輸送技術が急速に発達した15世紀末に、鉄釘を使った複数のマストの大型船が建造され、公開技術の発達と武器としての銃と大砲が作られ、遠洋航海が可能となった。ユーラシア大陸の西の端、ピレネー山脈で隔絶されたポルトガルとスペインが海洋帝国を築き、大航海時代の覇者になり、世界を2分して支配下に置いた。 


 その後、化石燃料である石炭そして石油がエネルギー革命を引き起こした。石炭や石油を燃やして蒸気を発生させ、それをエネルギーとして、あらゆる面で世界を変えた。コンクリートによる道路や建物、化学工業や医薬の進歩が世界を一変させた石油の世紀が始まる。石炭その後に石油を燃料にした艦隊を持って航行可能な海を支配する帝国が、アメリカ大陸やユーラシアの古くからの帝国を滅ぼし、世界を支配することになる。ポルトガル、スペイン、オランダに代わりイギリスが遠洋航海の力と工業の力を使って覇者の座を占めることになった。1815年から1914年の平和と繁栄の時代をもたらした。イギリスを中心位した平和な100年は市場自由主義の経済が破綻して、平和は崩壊し、ヨーロッパの大戦を引き起こした。

 

 第二次世界戦後は、戦争に勝ったアメリカが世界中の拠点を確保して、金融、農業、工業、貿易、文化、軍事のあらゆる面で支配権を握った。 ユーラシア大陸の中心部を支配したソ連はそれに対抗し、ヨーロッパの東の半分と、中国大陸とその周辺国を共産圏とした。米ソ2大国による冷戦の時代が始まった。アメリカはブレトンウッズ体制を使って、グローバル化を推進し、秩序を作りパックス オブ アメリカーナを作り上げた。それはミルトン フリードマンらのシカゴ学派の経済学者の理論が底流にあり、自由な市場と効率化を重視し、国境を超えた市場、貿易、金融をすすめ、国境を超えた資本の移動をもたらした。新しい通信技術と輸送技術が世界をグローバル化し、多国籍企業の成長につながった。


 1973年チリのチリでピノチェト政権が樹立。新経済政策が実施されチリの奇跡といわれた新自由主義政策を実行した。その後、世界中にこの新自由主義の政策はとり入れられた。 米ソ対立のもとで、日本を始めとして、東アジアで4ドラゴンズと呼ばれる、韓国、台湾、香港、シンガポールが生まれ、製造業の拠点として成長した。そしてレーガン サッチャー政権で新自由主義は推進され、中国をそのシステムに取り込み、ソ連は解体に追い込まれた。その後のロシアのエリチェン政権のもとで急進改革派によって新生ロシアにもこの自由主義政策が適応された。


 新自由主義のグローバル経済の下、交通網は陸、海、空ともつながり、世界中に物流網ができた。とりわけ大型コンテナ船は一度に多くの荷物を安く運搬でき、世界中の原材料を集め、組み立て、製品を大量に生産し、再び世界中どこでも安価にそれを組み立て輸出するシステムが整った。その体制のもとでBRICSの5カ国が台頭し、その中で特に10億人の労働者がいる中国は、膨大で安価な労働力を生かし、海外の資本と技術を取り入れ、製造業大国になった。安価なおもちゃや衣料品やがて世界各地で作られた膨大な部品を輸送し、中国で製品の組み立てを行い、アイフォンなどの生産を行う世界の工場となり爆発的な成長を遂げた。


 中国はクリントン政権下の2001年にWTO加盟し、製造力大国の弾みがついた。膨大な労働人口は沿岸部で足りなくなると、内陸部からの4億人の労働者が流入してそれを補い、製造業はますます発展した。東南アジアの国々もその後を追った。タイとマレーシアは自動車や電子機器、半導体など製造業の中間部分を担って発展し、ベトナム フィリピンやインドネシアもその競争に参加した。そこでは海賊もなく、帝国主義の徴発もない、自由で安全な輸送網がアメリカの秩序維持のもとで確保され世界中の国が製造と消費の市場競争に加わった。こうして世界経済は発展し、多くの国は豊かになっていった。その結果、アメリカやヨーロッパ、日本など先進国では田舎の街は消滅し、中間層は消失し、格差は増大した。アメリカではラスト ベルト地帯の白人労働者たちは中産階級から脱落していった。


 第二次世界大戦後の米ソ2大陣営対立の時代は50年続いて、ソ連型共産主義の崩壊で終了し、その後アメリカの覇権のもとに広がった新自由主義下のグローバル経済が、地形や経済状態、気候に関わりなく世界中に広がった。新自由主義経済を支えたアメリカは冷戦後30年たち、世界の警察官の役割をやめ世界から撤退しつつある。しかしそれに代わる経済理論や覇権国は生まれず、過去の帝国の時代のように、ユーラシア大陸では北のロシア、西のEU、東には中国、南にインドとイスラム教の国々がそれぞれの勢力圏の拡大を目指し、そしてアメリカはトランプ大統領のもとで極端な孤立主義に邁進していく。