2026/05/02

人型ロボット その3

 予測する機械


 2022年チャットGPTの出現によってAIが言語を操れるようになった。その後この機能の急速な進歩とともに、フィジカルAIの開発競争が起こり、現在ヒューマノイドロボット創世期になりつつある。 現在のロボットはすでに視覚 を使って、起こっている状態を推定し、未来を予想して行動ができる。そしてフィードバックで修正するというループを持っている。最近は、ロボットの中に、世界の内部モデルを作る。仮想空間で人間の経験と同じように、学習させ、ロボットが「この動きをするとどうなるか」を内部でシミュレーションするそして行動を決める 機能が開発されている。

 人工的に予測処理の脳を持ったヒューマノイド ロボットができるかは、多くの画像が世界を観察するセンサーとして働き、それを解析して人間の感覚に近いあるいはそれを上回る能力を持ち、感覚と予測を統合して人工の脳の中で世界のモデルが作れるかどうかが重要になる。現在人間の認知機能にあたる推論パターンの理解は急速に進歩している。

 しかし、人間は感覚から感情や記憶を使って状況を理解して行動することができるが、今のロボットはこれが統一できていない。 成功か失敗かは学習し局所的な対応は可能であるが、これは危険かどうか、重要かどうか、といった価値の判断はできない。人間は、どこに注意を向けるか何を無視するかで世界を構成する。ロボットはまだ全入力を均等に扱い、人間でいうノイズ耐性が弱い人「自閉スペクトラムに近い状態」が解決できていない。

さらに、世界を観察して、予測し、意味を解釈して行動に移す機能までは持っていない。この統合して分析する大脳系の役割とロボットの身体を動かす小脳系の統合はまだできていない。

自己モデルの進化

 生物の進化の歴史を辿ると、 最初はかなりシンプルで、生物はどこに自分の体があるか、何が危険か、どう動けば生き延びるかを判断する。次にこの動きをしたら捕食される、こっちに行けば餌があるという動く脳を持った生き物となり、脳は未来をシミュレーションする装置になっていく。 それは一個のニューロンが特定のものに対応するのではなく、ニューロンのパターンを脳が解読することができるようになったためである。

 そして捕食者の匂いを覚え、捕食者の姿を捉え、すばやく逃げることができた。こうして初期の脊椎動物は原始の海を生き延びることができた。5感による情報を集めて中枢神経によって情報を処理する仕組みは年月と共に進化していった。バラバラの刺激のまとまりのないパターンから時間と空間の中にある物体という知覚が生まれた。

 さらに、霊長類などの社会的動物になると協力、競争、騙し合いが生存に直結する。つまり相手のことを予想できる個体が有利になる。相手も「内側の状態」心を持っていると仮定する。たとえばあの個体は怒っている 。攻撃してくるかもしれない。あの個体は見ていない 。食べ物を横取りできる。相手に心があるのなら自分にも「心」があるはず。感情や信念を持って意図して行動する自分が生まれる。そして言葉によってそれが強化れ、 物語によって社会がつくられる。

 自分という存在は、己を知るために生まれたものではなく、生存のために周りの世界を理解する予測制度を上げるために生まれた。世界モデルができるそして、他者モデルができる。行動モデルができる。そしてそれらを統合する必要ができる、結果として「観測者」が内部に生成され、意識は生まれる。

 意識、自己は「理解するため」に生まれたのではなく「予測精度を上げるため」に生まれた。この不確実な世界でずーっと活動を続け、さまざまな活動をする身体を持つロボットは統合して、複雑化すると自己という構造ができてしまう。

感情を持つ機械

線虫のドーパミンニューロンは頭から小さな突起を伸ばし、その中に餌を感知するためだけに設計されたレセプターがある。これらのニューロンは餌を見つけると、その脳内にドーパミンを流し込む。それが数分続き、ドーパミンがふたたび低下して、線虫が逃走状態になるまで数分間続く。線虫のセロトニンニューロンには、喉に食べ物があることを感知するレセプターがあり、十分なセロトニンが放出されると、満足の状態が誘発される。 この原初の線虫の脳内の、ドーパミンとセロトニンの機能はミミズ、魚、ラット、人間に共通に認められ、感情的状態を起こす物質である。

 感情と呼ばれたものは、生物にとっては機能だった。ドーパミンは行動を促し、セロトニンは抑制する。ノルアドレナリンは危機に集中させ、オピオイドは回復をもたらす。

 現在ではAIの強化学習でドーパミン的なものを数式化している。報酬関数はドーパミンの代替となり、注意機構は重要な情報に集中する。さらに「好奇心」を持つアルゴリズムが開発され、未知を探索する動機が生まれつつある。知的好奇心を持った擬似ドーパミン的なものを作り出そうとしている。セロトニン的なやりすぎないAIは研究段階、一方アドレナリン重要な情報に集中することはかなりできている。

そして人間が空腹や疲労や痛みを感情を伴って感じるように、ロボットがエネルギーやモーターの負荷、温度を快や不快の人工的感情のように感じる仕組み、感情に似た制御の機構が機械はそれを、別の形で再現し始めている。

バッテリー残量、モーターの負荷、内部温度——それらは単なる数値ではなく、「避けるべき状態」「望ましい状態」として扱われるようになった。生物が空腹や疲労を感情として経験するように、機械もまた、内部状態を観察し、自分の状態を感じ始めるのかもしれない。


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