アメリカ大陸、とりわけ南米のアマゾンには広大な熱帯雨林が広がり、多様な生命が複雑に絡み合った生態系が動物や植物に見られる。多くの鳥類、昆虫類が植物を食べ、多くの哺乳類は樹上の生活をし、植物、昆虫、動物を食べ、草食動物を餌にする肉食動物の頂点には巨大なへび、アナゴンダ以外は天敵はいないジャガーがいる。へびも多くの種類がすみ、イグアナやトカゲ類もまた多くの種類が生息し、爬虫類や両生類の王国と言える。
生物の個体群の大きさは、天候などの環境に大きく依存している。熱帯雨林では植物は繁茂し、植物など生産者とその分解者はありあまるほど豊かに存在している。熱帯サバンナでは雨量が少なく、草食動物の数は植物の量に左右される。さらに雨量の少ない砂漠のような気候では、雨水と植生によって生物の生存はさらに大きな影響を受け、生物の種類は減る。
この個体群の数をコントロールしている、地上の生態系の調節はどのようになされているのか、さまざまな動物や植物、あるいは人類社会の影響が研究され、生態系のコントロールシステムはかなり解明されてきた。環境のおよぼす影響、草食動物と植生、肉食動物など生物のコミュニティーで全ての動植物が同じように個体数の調節に関与しているわけではないっことがわかってきた。
熱帯雨林とは異なるサバンナでは、また生物の生態は異なった様相を見せる。熱帯気候で定期的に乾期が訪れ、丈の高い草木と不連続な低木層からなる安定した生態をつくる地域で、大型哺乳類の像やキリン、ライオンの生息地で、東アフリカのセレゲンティ国立公園がその代表である。
ボロゴンジャ川から、エメラルドのような緑色したなだらかな丘が、一定の間隔で生えた木々とともに広がっている。地平線まで一望できるが、いたるところに木々が小さな木立をなして点在している。草原はこれ以上ないほどに緑色に染まっている。動物たちはあらゆる丘を覆い、一頭で、あるいは群れをなして平原に立ち、木立を出たり入ったりし、低地ではエサを食べている。
この地域は1951年にセレゲンティ国立公園として保護され、大型哺乳類が生態系を構成する地球上に残された特別な場所となった。1958年にこれらの動物の数が調べられた。ヌー9万9481頭、シマウマ5万9481頭、19万4854頭トムソンガゼルとグランドガゼル1717頭のインパラ1813頭の水牛、837頭のキリン、60頭の像を確認した。
1966年にはセレゲンティで水牛の調査が始められた。1959年から1961年にかけて水牛が多く死亡した。これは捕食者や飢餓ではなく病気、牛の感染症のアウトブレークによるものであることがわかった。このウィルスが東アフリカの動物の生態系に大きな影響を与えた。このウィルスがなくなると1973年にはヌーの数が77万頭に激増した。その後ヌーは増え続け、140万頭にも達し、それを捕食するライオンとハイエナの頭数もやはり増えていた。さらにヌーが大量の草を食べ、乾期の火災が減りその結果草食のキリンの数もまた増加した。
熱帯サバンナの生態調節の主役は捕食者ライオンではなく、ヌーで、草食動物、肉食動物、樹木の数に影響し生態系を調節していた。実際、1980年に比較して森林密度は30年間で急速に増加し、ヌーが草を食べ、草は豊かに茂り蝶は増え、バッタやイナゴは激減した。そして競合するトムソンガゼルは半減した。
気候によって、植物が減少すれば、草食動物の数は減り、肉食動物に多く捕食されればやはり数は減少する。 自然界では栄養カスケードに従って生物が階級をつくる。有機物を分解する菌類や蠕虫の仲間、気候などの環境、日光や雨量、土壌の栄養に依存する植物、それを食べる草食動物さらにそれを捕食する肉食動物で成り立っている。その捕食動物の中でも、食肉動物の食糧となる死骸を奪う力は、上からライオン、プチハイエナ、リカオン、褐色ハイエナ、ヒョウ、チーター、ジャッカルの順になる。
それらに捕食される草食動物は体重150キログラムで明らかに様子が異なる。体重の軽い小型のレイヨウまたはアンテロープ(ウシ科の動物でヌーやオリックス、インパラ、トムソンガゼルなどが含まれる)は多くの捕食動物に食べられ数は調整される。小型草食獣の数が増えれば肉食獣も数が増える。
しかし水牛やサイ、カバ、象の成獣は捕食されない。これらの大型になり捕食を免れた草食動物の個体数は、捕食者ではなく、生息地の仲間の密度に依存することがわかった。個体数が少なく、食べられる植物が多ければ、群は個体数を急速に増やす。そして必要な空間植物が草食動物の養うだけの量がなくなれば栄養不足で亡くなる成獣が増え、その群の数は減少し始め平衡状態になる。
サバンナでは乾期、草食動物は移動することで捕食を免れる。セレゲンティには定住するヌーの群と 移動性の群がいる。定住性のヌーは死因の87%はライオンやハイエナの捕食のためで、移動性のヌーはこれが約20%に減り、死因はほとんどが飢え死にになる。比較的身体に小さいオグロヌーは草を求めて一斉に100万頭が移動する、それにシマウマが加わり、ヌーの蹴り上げる昆虫を狙いアマサギが後を追う。この大移動がヌーの生存を保証している。
セレゲンティより乾燥しているボツワナのカラハリでは8か月も雨が一滴も降らない乾期と1か月から4月の雨季があり、高原地帯のため気温は寒い時には0度近くになる。砂漠とサバンナの中間の植生で、雨季には多くのライオンや草食動物が住み、乾期には移動する。相対湿度が最も低くなる暑い乾季になると野火が砂漠を焼き、木々の葉から最後の水分までも奪って干からびさせる。アンテローブ類は、アカシアの花や野生のメロン食べたり、砂地に深く潜った根を掘り起こし食べて生きている。しかし乾燥して植物が枯れ始めると、多くの草食動物は食物を求めて移動する。その草食動物の後を追って、捕食動物であるリカオンやハイエナ、ライオンもまた移動する。そして9月から翌年の乾期が終わり大粒の雨が大地を潤し、一斉に草が生え、水がたまるとライオンたちも戻り、集団生活を送る。
熱帯とは逆に北極に近い島スピッツベルゲン島では生物の種類は極端に少ない。そのためあらゆる生き物の相互関係が網羅できる。1922年にオックスフォード大学の極地探検隊のエルトンによりこの食物連鎖が初めて明らかにされた。プランクトンや魚類は海鳥やアザラシに食べられ、海鳥は北極キツネにアザラシは北極クマに食べられる。こうして生態系の調整の研究が始まった。その後、農薬散布によりウンカの大発生は天敵のクモの死滅によることや、アフリカの猿の被害はライオンやヒョウの減少によること、様々な地域の様々な生物の数はいかに調節されているかが研究されてきた。
今日、人がこの生態系に関与し、壊して予測不可能な副作用により、人の住む世界が急激に変化し劣化し、荒廃しつつある。20世紀は医療による生活向上の世紀であった。21世紀はこの生物の住む環境を守り緑の平原と豊饒の海を取り戻すことが最重要の課題になった。
