今から100年前ヨーロッパではふとっちょの赤ら顔は血圧が高く早死にすると言われていました。しかしそれは知性のある人々には信じられていませんでした。この時代噂を信じていたのは街角のおしゃべり好きと生命保険会社だけでした。高血圧が脳卒中をひきおこし、心不全や心筋梗塞の原因になることがわかるのはずーと後のことです。
1896年イタリアのリバーロッチが聴診器による血圧の測定法を発明しました。今とほとんど同じように腕にカフを巻いて圧を加え徐々にその圧を抜いていって最初の音を最高血圧、音が消える時を最低血圧とする血圧測定という新しい技術を確立し、人びとの血圧を測る事ができるようになりました。
しかしその当時、血圧がどんな意味を持つのかどんな治療したらいいのか不明で、1900年から1930年の間に高血圧の疫学に興味を示したのは保険会社だけでした。彼等はせっせと血圧や腹囲をはかり、血圧の高い人やお腹の大きい肥満の人は長生きできないとして保険の等級をきめていました。
第二次大戦中の1945年、時の大統領フランクリン ルーズベルトが250mmHg以上の高血圧が原因の脳卒中で死亡。 1949年には循環器疾患により死亡する人がアメリカにおける死亡原因の半分を占めるようになりました。そして 1950年代のアメリカにおいて3人の男性のうち1人が60歳に達する前に循環器の病気で亡くなることが明らかになりました。
そのため合衆国の公衆衛生局支援のもと1949年にフラミンガムと言う街で28000人の住民に対して20年間にわたる虚血性心疾患疾患の発生の調査が始められました。
フラミンガム研究と言われ、20年ののち1960年代にこの研究の結果が論文で発表され、高血圧、高コレステロール、喫煙が心臓病の3大危険因子であることをあきらかにし、コンピューターが導入され解析され新たな疫学調査の始まりとなりました。こうして1つの原因が1つの病気を作るとした19世紀のコッホの時代から、多くの原因による病気の発症と言う20世紀疫学の新しい時代がはじまりました。
この研究の結果は、カロリーや塩分、脂肪の取りすぎが肥満と運動不足、タバコとともに心臓血管の病気を起こすこと、特に高血圧は治療しない人はより多くの脳卒中、脳内出血を起こし、腎臓の病気をおこし、大動脈瘤の解離を起こすことを証明しました。 そしてかつて高血圧は多くの症状示す悪性の病気と考えられていたものが、実は長期間無症状で遺伝的素因に生活習慣が変わって次第に症状を表してくるものだとわかってきました。
フラミング研究は初期の心電図や胸部レントゲンにくわえ医療の技術の進歩により超音波エコーが導入され、心臓の肥大がリスク因子になる心不全のメカニズム明らかにされ、さらに1980年代後半から遺伝子レヴェルの危険因子の解析がすすめられ、フラミンガム研究も新たな領域に踏み込み現在も研究が続けられています。日本でもアメリカの国立衛生研究所の資金提供をうけ九州の久山町で心血管疾患の疫学調査が続けられています。
フラミング研究により喫煙、高血圧、コレステロールの心臓病の三大危険因子が明らかになり、1960年代には喫煙をなくす運動が展開され、1970年代には高血圧をターゲットに、そして1980年代にはコレステロールと戦う運動がすすめられました。
高血圧の薬は最初は利尿剤そしてその後様々な降圧剤で現在がつくられ今ではどんなタイプの高血圧もコントロールが可能となりました。20世紀のはじめは高血圧による脳出血の死亡者が世界中で多く、とりわけ日本においてその数は先進国のなかでとびぬけていて、1965年脳卒中死亡率が世界第一位になってしまった。その後日本においても20世紀の後半には脳出血の患者はしだいに減少し、生活習慣の改善や治療の進歩によって高血圧がコントロールされコレステロールの低下が狭心症や心筋梗塞の人を減らし、その後の長寿社会をもたらす大きな要因となっています。
今世紀になり、動脈硬化の治療も急速に進歩し ,高血圧、脂質、血糖は運動習慣やくすりによりコントロール可能になり、狭心症や心筋梗塞、頸動脈狭窄、脳動脈病変の多くは救命できるようになってきました。
特に血管内のカテーテルの治療は、狭くなった動脈をひろげもとにもどす方法です。心臓の栄養血管である冠動脈または足の動脈そして脳の動脈いずれも広げ、ステントと言う網目状の金属を入れ血流を保つ技術で、いまも進化を続けています。
さらに大動脈がふくれ(大動脈瘤)て破裂するのを防ぐため人工の血管に置き換える手段も胸からお腹までどこでもできるようになりました。
さらに大動脈がふくれ(大動脈瘤)て破裂するのを防ぐため人工の血管に置き換える手段も胸からお腹までどこでもできるようになりました。
さらにカテーテルによる不整脈治療が進歩し、心臓の弁の病気も血管内の治療で治る時代になってきました。TAVIと呼ばれる機械で傷ついた大動脈の弁を手術することなく血管の中から取り替えることもできるようになりました。
今後、さらなる機器や技術の進歩によって血管の病気は脳であれ心臓であれ、その他の部位でも血管のなかからあらゆる治療が出来るようのなる時代がきています。
今後、さらなる機器や技術の進歩によって血管の病気は脳であれ心臓であれ、その他の部位でも血管のなかからあらゆる治療が出来るようのなる時代がきています。


