原子力の恐怖はいつの間にか風化しつつあった。
人の心は移ろいやすく、広島と長崎の原爆投下でさえ歴史の中の出来事になりつつあった。
原子力の開発がアインシュタインの予言からロスアラモスで原子爆弾は開発され完成し投下された。人は原子力を使って巨大なエネルギーを生み出すことはできた。しかしその結果生みだされた世界は、想像力をもって想定できる範囲をはるかに超えるものであった。
原子力から生み出される放射性物質は生物にどのような影響を与えるかは、広島、長崎、チェルノブイリで一部明らかにされたものの、確かなことはほんの少しで、現在まで不明なことが多かった。
2011年3月11日の震災、津波により、福島における原子力発電所の事故は起きた。震災の翌日12日のベントと1号機の水素爆発、続いて14日の3号機の水素爆発は、原子炉から漏れだした大量の放射性物質を広範囲に飛散させ周囲を高濃度放射性物質で汚染することになります。
その爆発物の中には、放射性ヨウ素、放射性セシウム、プルトニウム、ストロンチウムなどが含まれ、80キロ圏内ではストロンチウムが、45キロ圏内ではプルトニウムが土壌中から検出されました。プルトニウムやストロンチウムなどの重い物質までが遠方まで飛散したことはあらためて今回の爆発力の巨大さを証明しています。
軽い物質である放射性ヨウ素はさらに遠くまで飛散しました。この半減期はおよそ8日と短いものの、体内に取り込まれると甲状腺に集積して甲状腺がんをひきおこします。
甲状腺は、とくに成長に重要なホルモンである甲状腺ホルモンを分泌し全身の活動力を調整し、成長をうながす役割の臓器です。放射性ヨードはこの甲状腺に大部分取り込まれ放射線を出し続け、5年以上の期間たってから若い人たちに甲状腺がんをおこします。
チェルノブイリの爆発による放射性ヨウ素は甲状腺がんを7000人以上の人に発症させています。このがんの進行は比較的ゆっくりで、早期に発見し手術で完治することは可能です。
放射性セシウムは、80キロ圏内で高濃度の土壌集積をみとめ、更に遠方でも多くのホットスポットをつくっています。 この放射性セシウムは,カリウムに似ているため、体内似取り込まれると、全身に蓄積します。セシウム134の半減期は2年、セシウム137の半減期は30年です。この物質もまた甲状腺などの内分泌器官に多く蓄積 し、体内で放射線を出し続けます。その結果遺伝子に働きかけ、発がん性を高めることはわかってっいます。
プルトニウムはウラン燃料が核分裂してできる物質で、一度体内に取り込まれると排出されることなくアルファ線による内部被爆は続き、半減期はプルトニウム238が87年、239は2万4000年かかります。その結果、肺がんや白血病を引き起こすことになります。
今後、放射線の被曝を防ぎ、安全な生活を送るためにはフクシマ原発からどの核種がどのくらいの濃度で飛散し、現在もどのくらいの濃度で存在するのか正確に知る必要があります。
近代科学の生み出した様々な科学物質はあるものは自然に浄化されあるものは、毒性を残すもののしだいに生態系に取り込まれて行きます。
一方,原子力の爆発で生みだされた放射性物質は広範囲に拡散し、東日本の水田,森、土壌を汚染しました。放射性物質は環境にとっての異物であり、地球上の生態系に同化することなく、人の力では完全に浄化することは不可能で、何万年にもわたって放射線を出し続けるやっかいな存在です。
0 件のコメント:
コメントを投稿