2026/06/16

21世紀覇者

 


 21世紀の初め、アメリカの経済は好調で、世界という舞台で無敵だった。自由市場と自由投票選挙のアメリカモデルは世界に浸透していった。



 1997年クリントン政権は、G7のメンバーに新たにロシアのエリチェン大統領を迎えた。ソ連崩壊後6年でロシアはG8のメンバーに加わった。そして、NAFTA締結をした後、2001年中国のWTOの加盟を推進しそれを認めた。それらを強力に推進したのがボーイング、モトローラー、ぜネラルモータース、キャタピラー、P andGなどのアメリカ企業だった。中国は海外とりわけアメリカからの投資資金の流入や技術の導入によって、輸出は伸び、所得も向上した。アメリカや世界に低価格の製品を輸出して、アメリカの消費を支え、そして家電製品、産業機械、自動車や衣料品などのグローバルサプライチェーンの中心になっていく。1993年のクリントン政権から2013年のオバマ政権の初期までの米中の黄金の20年が訪れた。

 2000年クリントン大統領は「中国は単に米国製品の輸入に合意しているだけではない。中国は民主主義が最も大切にしている価値をも輸入することに合意しようとしている。すなわち、経済的自由である。中国が経済を自由化すればするほど、中国は人々の可能性も自由化するだろう。」 当時上院議員であったジョー バイデン元大統領は、「貿易拡大が独裁体制国家内での自由を拡大する。共産主義国家である中国とソ連崩壊後のロシアをアメリカ主導の経済秩序にくみこめば、繁栄と平和、政治的自由化がもたらされる」と2009年の議会で主張していた。当時シリコンバレーで開発されたインターネットなどの IT技術が世界の独裁者を弱体化させると確信していた。


 このグロバリゼーションの時代は技術としてのインターネット時代であった。インターネット時代が始まるとパソコンでWeb1の時代、見るだけだったものが、Web2になり簡単にネットで参加することのできる参加型のインターネットになった。当時日本のmixiやグリーは国内のガラケー上で人気であった。一方アメリカのFacebookやTWItter,You Tubeは世界に広がっていった。その頃中国は、情報統制と国内産業の育成を進めWeChatやTencent,AlibabaあるいはBaiduなどが国内で完備され、TIkTokは世界中に広がっていった。その後中国国内の企業が情報産業でも進歩し、中国独自の情報空間をつくっていく。


 その2000年代日本はeジャパン戦略を森内閣の時に発足させ、5年以内に世界最先端のIT国家を目指す方針を打ち出した。しかし実現しなかった。行政や企業は紙文化のままデジタル化を進めた。そのために組織構造は変えずに、旧構造が一部デジタル化された。一部のゲームやエンターテイメントでは成功した。 

 2002年ウィニーがファイル分散型の共有ソフトを発売した。この画期的技術は著作権法違反の疑いで逮捕起訴された。結局最高裁まで争われ、無罪となった。

2006年ライブドア事件が起きた。インターネット、media、金融のスタートアップ企業が、証券取引法違反で東京地検特捜部に起訴された。この事件は日本の個人が新しい発想で起業し成功する芽を摘み、元の現状維持と既得権者の世界に戻ってしまった象徴的的事件だったのかもしれない。そして、バブル崩壊以降企業も雇用を守り、社会保障を守り、新たな設備投資は行わなかった。そのため中国や台湾や韓国などとの経済競争には勝てなくなった。


  2010年初頭のアメリカ政府は市場がすべての答えを持ち、中国やロシアを国際貿易システムに組み込むことで平和な未来が訪れるという楽観論に覆われていた。こうして2010年代には、BRICSブームとインターネットを通じたSNSによるアラブの春をもたらした。その後、ロシアが経済破綻から、プーチン政権の強権政治に変わり、ウクライナに武力侵攻を始め、共産主義国家中国は民主主義国家になるどころかAIの技術を使って国家の支配をより強固なものにした。


 アメリカにトランプ政権が誕生すると、無制限なグローバリゼーションは否定され、政府が補助金や高い関税をかけ、あるいはその両方を使って経済成果を上げるべきという政策に変更された。そのグローバリズムが終焉する時から、AI時代が始まった。AI時代オープンAIやアンソロピックといった新興企業やGoogleやAmazonが、世界的な影響力を持ち、世界の覇権を確立しようとし、中国は国内の閉じたプラットフォームを完成させつつある。現在AIをめぐってアメリカと中国は単なる経済競争ではなく、システム競争、国際秩序を争う覇権争いとなっている。


本年6月アメリカはAlibaba、Baidu、BYDを中国軍事企業のリストに加えた。さらにホワイトハウスはアンソロピックに輸出規制を課した。

2026/06/01

半導体の歴史

  いま、国々のパワーの根幹をなすのはコンピューティング、つまり計算力である。そして、その計算力を生み出すのがロジック半導体である。半導体と設計能力と製造能力が、国々のパワーと競争力を左右する新たな頭脳であり資源となった。


               クリス ミラー       半導体戦争


 1950年代アメリカでトランジスタが発明されコンピューターで、真空菅に変わって使われ始めた。 1957年10月ソ連のスプートニク号が打ち上げられ、世界初の人工衛星として地球を回った。4年後に ユーリイ ガガーリン少佐が人類初の宇宙飛行士になった。そのスプートニク ショックに対してアメリカのJ .

F.ケネディー大統領は1970年までに人類を月に送り込む計画を立てた。そのアポロ計画の打ち上げに半導体の集積回路が使われた。


 民間の日本のトランジスタ生産はソニーのトランジスタラジオから始まった。ソニーはラジオに使えるトランジスタを自社開発した。その後、真空管の大手メーカーの東芝、日立、日本電気も参入し、日本は世界最大のトランジスタ生産国となり、それが家電に使われ、国内には巨大な半導体の市場が出来上がった。そしてソニーのウオークマンは、世界中で爆発的に売れた。



 1981年64K DRAMで日立製作所、富士通、NECなどの日本の企業の世界シェアは70%で、自動車産業とともに日本の基幹産業だった。 1986年9月にアメリカは日本の半導体の興盛を阻止するため日米半導体協定が結ばれた。「外資系企業の日本での半導体売り上げが5年間で少なくとも日本市場の20%強へと成長するという米国半導体産業の期待を、日本政府は認識する。日本政府は、これを実現可能であると考え、実現を歓迎する。」こうしてアメリカ半導体産業の日本国内への市場参入の機会の増加と、第3国への輸出のダンピングの防止を約束した。


 1989年石原慎太郎は「NOと言える日本」の中で「中距離弾道弾にしろ、大陸間弾道弾のICBMにしろ、兵器としての精度を保証するのはコンパクトで精度の高いコンピューターでしかない。要するに日本の半導体を使わなくては精度の保証ができなくなっている。」「日本がソ連に先進的な半導体をを提供すれば、冷戦の軍事的なバランスをガラリと変えることができる。」


 1985年インテルはDRAM市場から撤退してロジック半導体に方向転換した。その後パソコンが世界的に普及しウィンドウズパソコンと協力しウインテル連合を組んだ。そしてウィンドウズ95が大ヒットし世界中に広がり、インテルは盤石の地位を確保した。

 一方、台湾のTSMCは製造に特化して、AMDやアップルと組んでパソコンの半導体部門で躍進した。1997年同じ台湾出身のジェイソン ファンのNVIDIAと提携して、その半導体を作ることになる。韓国のサムスンは1969年創業し、1974年半導体事業に参入。1983年アメリカの半導体メーカーのマイクロンの技術供与を受けて1986年にDRAM製造を開始した。そしてパソコンの普及ととものシェアを拡大し、フラッシュメモリー、ロジック半導体さらにはスマートフォンや家電も製造している。


 日本は1970年代と80年代半導体で世界を席巻していた。プラザ合意の後、日本の円は2年半で2倍になった。バブルの崩壊後デフレの時代になり、企業は一斉にリストラに走った、多くの産業で高度な技術者は、日本企業から韓国企業や台湾企業に流失し、同時に技術も流失していった。パソコンの半導体はアメリカと韓国、台湾連合に敗北した。


 2000年にはITはインターネットの普及とともに世界中でに普及しドットコムバブルとなり、ここで半導体メーカーの再編が起こった。スマートフォンは2007年のアイフォンが発売されて、その後世界的に爆発的に普及した。そこに日本は半導体を供給することができなかった。初代のアイフォンは半導体の設計と製造は韓国のサムスンに委託していた。その後アップル自身がARMをベースにしたシリコンチップを自社で設計し、台湾のTSMCが製造している。現在もこれらのアプリケーションプロセッサーは台湾で製造され、中国に送られそこで組み立てられている。


 2022年秋にオープンAIが対話型AIを発表した。これはAIが産業革命に匹敵する発展の先駆けであり、NVIDIAのCEOジェンソン ファン氏はAIにおけるアイフォンの登場と表現した。このAIは多くの半導体に支えられ、NVIDIA製のGPUは必要不可欠で、世界中の強大なデーターセンターがこれらを使って建設されつつある。データーセンターは半導体の塊で、文章がインターネットを通ってクラウドのデーターセンターに届き CPUやGPUが働いてネットワークを戻って返事をする。

世界のあらゆる活動はデジタル化され、そしてAIを使ってコントロールする、それはすべて半導体上で動く世界になった。そしてその製造はほとんど東アジアの国々が行なっている。


 産業の大転換の初期は過剰投資と熱狂的な金融ブーム、株式のバブルが発生する。現在AI、半導体はバブルの様相を示している。