2026/08/09

人口減少時代

 


 1798年マルサスが人口論で、「人口は制限されない限り、等比級数に増加するが、食料はそれに追いつかない。やがて人口過剰になり、人口の増加は抑制される。」また「明らかなことは、肥沃な土地は数年のうちに人口が一杯になるということだ。また、この原理により、人間が久しく住んでいる国々ではいろいろの困難が発生する。」

 多くの生物は、多くの子孫を産んで、環境や捕食者たちとの生存競争で生き残る。人類も、長期にわたって、生と死を自然に委ねて生きていきた。そして人類は、外敵との戦いに勝って、地球上の勝者となり、80億人を超えるまで人口は増加した。


 イギリスが産業革命を起こした頃、19世紀世界初の近代化による人口の増加が始まった。それは第一の人口転換で、出生率が高いままで、衛生状態の改善や医療の進歩で死亡率が下り始め、人口は急速に増加した。それはやがて世界中各地に広がり、1950年以降著明になった。日本では1950年の1000人あたりの乳児死亡は50人だったのが、その後大幅に低下し、現在わずか2人にまで減少した。

 このヨーロッパで始まった人口の増加は、第二次大戦後アジア、とりわけ中国で巨大な規模で再現した。21世紀に入ると、アフリカでこの人口の爆発が起こってきた。そして死亡率の低下と相まって世界の人口は急速に増加した。


 人口増加による影響は、まず人々が仕事を求めて、都市に移動し、住み始めることによって現れ、都市化が起こる。そして経済的には、人口増加による人工ボーナスを使い、経済的にも産業が発達し、国が豊かになる。これが第二次大戦後、日本、アジアの5ドラゴンズと呼ばれる国や地域、中国、そして東南アジアなどの経済力の目覚ましい上昇と都市化をもたらした要因となった。

 そして、人口増加と都市化に対応した都市計画として、最初はイギリスの田園都市構想、そして日本のニュータウン構想、やがて世界中で大規模な集合住宅や巨大なマンション群ができ、急増する人口を吸収した。都市化は急速に進み現在世界の人口の60%以上が都市に住むようになった。これは第二次大戦の頃の30%に比較すると約2倍になっている。そして100万人起こす大都市も急速に増えて、インドでは40以上、そして中国では100以上になって、やがて200近くになる。

 少子化とともに高齢化が起こり、次第に各国の平均寿命は急速に伸び、21世紀になっても世界中で人口は増加を続けた。


 19世紀末から20世紀に入ると、「第二の人口転換」が起きる。20世紀に入る頃、イギリスでは教育水準の高い家族から子供の数が平均2人に減ってくる。経済が人口を決めるのではなく、個人の選択が人口決めるようになった。


 出生率の低下はやがて東ヨーロッパの国々、ブルガリア、ウクライナなどの国々にも広がっていく。この出生率の低下に加えて、ソ連崩壊により若者は西ヨーロッパに移住したことが重なり急速に人口が減少した。両国は1990年から2025年までに25%ほど人口は減少した。 一方、イギリス、ドイツ、フランスなどの西ヨーロッパ諸国では人口の減少が海外からの移民によって抑えられている。イギリスはインド生まれの人は90万人、ポーランド68万人、パキスタン46万人でフランスでは北アフリカのアルジェリア、モロッコ、チュニジア生まれの人々が46%を占め、ドイツではトルコからが最も多く、それに続いて東欧からの人々が続く。




 2007年になり、日本の人口はピークを迎え、その後減り始めた。そして中国もまた2022年に人口のピークをつけ、減少局面が始まった。さらに、インドなどの南アジアやインドネシアなどの東南アジアも、人口ボーナスの恩恵を受けながら経済発展を遂げてきた。こうした人口増加と豊富な労働力は、世界的な生産能力を高め、グローバル化とともに物価を押し下げる力としても働いた。この人口の増加とグローバル化によって世界はデフレになっていた。


 経済成長を牽引してきた国々で人口減少が進むと、高齢化の影響を最も強く受け、深刻な問題を抱えるようになる。高齢化経済は長期停滞を生み出し、労働人口が減ると世界はデフレからインフレになり、金利も上昇する。労働人口の減少に加えて、高齢化で介護者に対する医療分野の労働力が必要となりる。人口増加の時代農村から都市に人口は移動し、団地に住み、マンションやニュータウンに住み、やがて都会ではタワーマンションが林立し、東京の港区や中央区の一部の地域では戸建て住宅はほとんどない、マンション住まいがほとんどとなっいる。


 これが逆転し、人口減少に向かう社会では、人口減少が農村地帯に起こり、その村や街に囲まれた地方都市も衰退する。やがて都心のマンションや都市郊外に空き家が増える。発展と成長が止まると、都市は活力を奪われ、衰退する。日本ではやがて、人口は一億人を切り、空き家1000万戸時代を迎える。

 日本は、人口減少社会のトップランナーで、だれも歴史上経験したことのない世界で、その綱渡りにも似た財政政策、福祉政策、都市政策の成否が日本の行末を決めることになる。