感情は普通周囲の環境からもたらすされる刺激に反応して一時的に生まれる。特定の感情が続いて固定化されたものを気分と呼ぶ。個人の気分はいろいろで安定した晴れやかな性質の人もいれば暗いレンズを通して見る人もいるこれは気質と呼ばれる。
人間の脳にはかつては爬虫類から受け継いだ、生存に必要な皮質下の神経回路があり、その上に初期の哺乳類から受け継いだ大脳辺縁系と呼ばれる情動システムがあり、その周囲を人類独特の理性を生み出している大脳皮質が乗っているというカール セーガンのエデンの恐竜のモデルは一般に人の進化のモデルとしてわかりやすく説明し、この説は知能の源流のモデルとして広く受け入れられてきた。しかし最近では全ての脳の部位が、あらゆる脊椎動物に備わっていることが明らかになり、人間の脳もまた、全ての判断や行動は内受容体の影響をうけていて、それから免れられないように解剖学的にできていることがわかってきた。
世界は、様々な刺激、電磁波、音波、超音波、熱、などで満ちた混沌の世界で、この地球上の環境で、人は目覚めている時は常に、目、耳、鼻、舌、皮膚から情報を受け取っている。脳は過去の経験をつかって、シミュレーションし、このノイズだらけの情報と比べて、あったもの選びいらないものを無視し、意味を創りだす。見る、聞く、触れる、嗅ぐといった活動は外界に対する反応ではなく、それに対する脳でのシミュレーションである。ジョン リリーの感覚遮断(アイソレーション)実験のように下界からの刺激がなくなった時にも、脳は活発に活動し、新たに世界を組み立てる。
様々な感覚の取り入れた刺激の情報が、ノイズでなく例えばミツバチがミツバチであり、それに触れれば刺され、それを避ける行動を起こすためには、ミツバチの色と形と羽音の感覚をち取り入れ、過去の経験からミツバチと判断し、刺すことの危険を予測して行動に移す、こうして脳は進化してきた。
感情は、脳が周囲と体の中で起きていることをまとめあげてでつくりだされる。体内の刺激を受け取る、内受容体というものがある。その役割は、脳にとっては、自分の体もまた外界の一部に過ぎない体の中からの情報の理解とコントロールにある。心臓の動き、息をする、体温の変化などのあいまいな感覚の情報が、ノイズとともに脳に送られる、脳はこれらの感覚を意味あるものにして捉えることが必要となる。そのための予測を行う。感覚がとらえた外の世界を脳が解釈するのと同じ方法で、体内の動きをとらえ予想する。
その内容は快、不快、興奮、清浄感などである。この内部の感覚、内受容のネットワークが体のあらゆる部位の情報を受け取って、蓄積された過去の感情的記憶から予想し、感覚入力と照らし合わせ、睡眠と食欲を調整し、心臓の鼓動や息の荒さを調節し、アドレナリン、エンドルフィン、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンなどの出方を調節する。そして人の体を動かし、行動し、この世界を生き延びる。
感情は、人を行動させるためにある。人は24時間内受容と感覚入力を使って予測し行動する。朝目覚めた時の気分、爽快なのか、憂鬱なのか、活動力が溢れているのか、退屈で倦怠感を感じているのか。人は爽快な気分になれば、活動を起こし、憂鬱な気分に襲われれば閉じこもる。 人は日々の生活で、気分、感情を情報として使っている。この食べ物はおいしいか、この人は信頼でき近ずいていいのか、あるいは危険で避けたほうがいいのか。
これは知覚だけでなく、心の中で起こっていること全てに共通の出来事で、脳はシミュレーションしていくつかのものを一つにまとめ概念をつくり、別のいくつかのものを切り離す。概念を使って、外からの感覚刺激と、体内からの刺激の両方に意味を与える。このようにして胃が痛んだとき、その情報から空腹、ストレス、不安などの実態をつくりだす。この時の不安の気分は、痛みから生み出された情動である。情動とは、外界で起こっていることの関係が、胃の痛みなど体の感覚が何を意味するかをめぐって創りだされたもの、脳の生み出したものである。この感情、情動や欲望が人々に、大脳皮質を使って計画を立てさせ、行動に駆り立てる。
感情は決断に必要である。内受容体のネットワークは、どこに集中すべきかを決めるの組織で、何かの事故で傷をうけると、意思決定が損なわれる。ある患者は、大怪我で脳の一部を損傷し、計算や活動などあらゆることは普通にできたものの、活動すべきか何をすべきかの舵がなくなり判断ができなくなってしまった。情熱、欲望や感情といった情念は知恵の獲得に必要なだけでなく、あらゆる判断に必要であることがわかった。
愛犬家は、我が家の愛犬の喜怒哀楽をあらわす感情ががあると信じています。ではこれが人と同じ感情の生成メカニズムなのか。あるいは、イルカやクジラは感情を持ち、お互いにコミュニケーションを行い、親子関係を作っているのか。今、これらの動物も喜び悲しみ恐れなどの感情を持ち、生活を行なっている。そして高度な脳神経のネットワークを持ち、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が存在し感情を調節していることがわかってきました。
イルカやクジラの他に象や猿、一部の鳥類は感情を持っている可能性が高く、たこやいかなどにも感情がある可能性が示唆されています。生物は脊椎動物だけでなく、クラゲやタコも進化の過程で、外界を感じ、この感覚を頼りに行動を起こす、さらにこれを経験とする意識する感性がどこかで生まれた。生物の進化とともに、どこかの時点で、しだいに生き物の中に生まれてきたのは確かである。
内的なできごと、経験にもとずく主観がタコなどの頭足動物にもすでにあるのか、体を制御するシステム、神経系を持った動物、脊椎動物で初めて現れるものなのか、高等動物に限られるは未だ解っていない。 さらに、神経が明滅するニューロンででき、それが感情や意識を生み出すとしたら、進化したAIもまた感情や意識を生み出すかもしれません。
ものごとは心にもとづき、
心を主とし、心によってつくり出される。 仏教経典「ダンマパダ」
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